フェアネス意識は文化に依存する draft ≪MAIN≫ The Magic of Dialogue

2004年12月30日

対話とは何かー効果的コミュニケーションのために

 日本経営品質賞やマルコム・ボルドリッジ国家基準では「対話 DIALOGUE」の大切さを説いている。対話の中から「気づき」を得て、全体最適になる改善に取り組むのだという。それは広義のコミュニケーション手段のひとつであるが、口先や言葉だけで行うものではなく、当事者たちの「全人格的」な相互関係の問題である。

 Interpersonal Communication Skillは、アメリカの学校および社会人教育の基本である。Adult SchoolのカリキュラムにはDialogueとDiscussionとDebate、そしてPresentationやBody Languageといったクラスがある。ビジネス英語のSpeakingとWritingと同様にプロのSecretaryの基本でもあり、昔、私も一緒に受講した。もちろん学校教育の現場でも基本であり、Basic Communicationというのが日本で言う「国語」教育である。英単語をそのまま書いたが、日本語にすると誤解が生じると考えるので、英単語をそのまま書いている。たとえば、Dialogue(対話)とDiscussion(議論)の違いを認識し、共通理解がなされているだろうかと危惧する。さらにいえばDebate(討論?)、Argument(議論?)などをふくめて違いを理解した上でコミュニケーションを図っているのだろうか?

 日本ではこの種の対話の教育はほとんどなされてこなかったのではないか。発表能力とか説得のための技法・技能に走ってはいないだろうか。職場での活発な対話(Dialogue)から真の理解につながるコミュニケーションが効果的になされているだろうかと今一度、謙虚に問い直してみることが大切である。

 コミュニケーションを効果的に行うためには、以下に述べる5つの要素、(1)自己概念、(2)傾聴、(3)明確な表現、(4)感情の取り扱い、(5)自己開示が大切である。これは、JQAセルフアセッサ認定研修において、自分の対人コミュニケーションの特徴を把握するために使用された5つの要素である。これに関してコメントする。各要素の「」の説明は、コミュニケーションに大切なこととして一般に言われていることを引用した。アメリカで一般によく言われることを英語で併記した。

(1)しっかりとした自己概念をもっていること Identity- Need to know who you really are and how you think and feel

 「自分は何者であるかを認識していること。どこに属し、何ができて、何ができないのか、何に価値をおき、何を信じているのかを明確に認識していることが大切である。このことは、我々が見たり聞いたり、判断し理解するプロセスと行動に大きく影響を与えている。同時に、他人とのコミュニケーション(対話 Dialogue)にも大きな影響を与えている。互いに理解しあえる健康な対話をして、互いに満足できる人間関係をもつためには、確固としたアイデンティティ(自己概念)をもっていることが重要である。とくに異民族・異文化の間でのコミュニケーションには必要不可欠である。」

 日本人はこの認識が弱いのではないか。欧米だけでなく中東や中国、韓国の人たちには、強烈なアイデンティティがある。それでないと弱肉強食の世の中で生きていけないという危機意識がある。このアイデンティティが犯されるようになって最後に残るのが「尊厳 DIGNITY」である。「泣き寝入り」の精神風土は微塵もない。このことは別の機会に例示したい。

(2)よい聴き手であること Active Listening(Receiving-allowing the other person to express who they really are.)

 「"聴く"( LISTEN) ことは、自然に耳に入ってくることを単に"聞く" (HEAR)ことよりも込み入ったものである。相手の言っている意味を探り、理解するためには、知的にも感情的にも身体的にもエネルギーを集中してはじめてできるものである。こちらからコトバを投げかけ反応をうかがうとともに、相手の言葉の背後にあるもの、言葉と言葉の間にある沈黙の中にあるもの、相手の身振り手振り、顔の表情や目の中にあるもの(Body Language)、感情を聴くことが大切である。」

 日本ではこうした点の教育訓練の機会が少ないのではないだろうか。以心伝心や阿吽の呼吸に代表される精神風土が邪魔をしているように思う。わたしもその一人だが、海外で仕事をするときは「傾聴」することに神経とエネルギーを集中させないと相手の言っていることが理解できないから、意識的にそういった対話が基本となってくる。ところが日本ではどうもしゃべりすぎるようになるのはどういうことなのかと反省する。

(3)明確な表現 Ability to Express their own ideas, opinions, values and experiences

 「聴くことが大切といっても、それだけでは対話は成立しない。自分が伝えたいことや考えたり感じていることを明確に表現することが必要である。自分の言いたいことをはっきりと全部言わなくても、相手はわかってくれているものだと思い込むことがある。「以心伝心」は妄想と知るべきでしょう。効果的に伝えるためには、深く多角的に考え、自分の言いたいことを心の中ではっきりとイメージして、同時にそれを明確な言葉で表現する工夫をすることが大切である。そして、相手から返ってくる反応をとらえて、自分の言ったことがどのように伝わっているかをチェックしていくことが必要である。」

 日本では、堂々と自説をはっきりと展開する人は嫌われる傾向にあったり、物言えば唇寒しといった風潮があることも、明確に表現することをはばかる要因になっているのではないか。同属仲間の「まぁまぁ」主義を克服することが必要となる。そして、「感情」を個人的にとらないことであろう。

(4)感情の取り扱い Accurate Receiving by Dealing with Emotion(EQ)

 「とくに怒りの感情をどう取り扱うかはコミュニケーションを深めるための要となる。自分の怒りの感情を抑え込んでしまう人が多い。怒りを表面に出すと、相手も同じように怒るだろうと恐れるからである。そういう人は、感情的なやり取りはマイナスで決裂の結果を招くと考える傾向があり、他の人が自分に反対するということだけで不快感を持つ。怒りが溜まると、なんでもないことをきっかけにしてある日突然それが爆発する。相手はなんだか理由が分からないので不当と受け取り、互いに敵意を感じあって破滅に向かうことになる。そうなる前に、感情を隠さずに述べ、その感情の性格を把握して自分の意思との相違を明確に認識することが大切である。」

 ビジネス折衝などで、自分に明らかに不利なことを突きつけられ「不当な要求」だと思い、内心腹が立っても明確な表現ができず、それを卑屈な笑いでごまかすといったことがないだろうか。そんな場面に何度か仲介者として立ちあい、私は我慢がならず相手に怒りをぶつけて、なぜ怒っているかを説明したことがある。交渉は決裂かと思いきや、相手がWASP系だったりするとあっさりと折れて交渉がスムーズに行ったという経験がある。かれらは決して個人的に根に持ったりしない。あくまでもビジネスであり、あとは雨降って地固まるがごとくに邯鄲相照らす仲になったということもある。もっとも相手を間違うと逆効果ということもある。イギリスや韓国では、また違う感情の処理をしないといけない。

(5)自己開示  Being Open is the Key- have the courage to reveal ourselves to others

 「自分に関するあらゆること、生い立ち、経験、気持ち、考え、意見、性質、仕事への姿勢、価値観などを衒うことなく話せる能力は、とくに異文化間でのコミュニケーションにとって大切なことである。相手に自分を打ち明けることによって、相手に自分という人間を知ってもらう。そのことにより相手もまた自分を開くことになり互いを知ることになる。それが信頼関係を築く第一歩となる。自己開示ができるのは、健康な人格を持っている印である。自分が本当に自分であるということに確信がもてるときに、自分の考えや気持ちを十分に相手に表すことができる。自己の確立という言い方もできるが、その時に自分の成功や喜びだけでなく失敗や恥も他人と分かち合える。逆に言えば、自己を開示することによって自己が確立していく。」

 この自己開示は、言うは易し行うは難しの見本でもある。他人に対する恐怖心や不信が妨げとなる。自分を開示しないということは他人も受け入れないということになり、不信が生まれかねない。自由で善意に溢れた雰囲気が大切になる。「自由闊達」に意見が言い合える職場というのは、容易に実現できるものでもないのが現実だが、そこに到達することをあきらめてはならない。

Suggested Readings about Dialogue

Bohm, David and Edwards, Mark. Changing Consciousness, Exploring the Hidden Source of the Social, Political and Environmental Crises Facing our World. Pegasus, New York, NY. 1992.

Bohm, David. On Dialogue. David Bohm Seminars. Ojai, CA.

Bohm, David. Unfolding Meaning. A weekend of Dialogue with David Bohm. Ark Paperbacks, 1985.

Cook, Scott D.N. and Yanow, Davora. Culture and Organizational Learning. The Journal of Management Inquiry, Vol. 2 No. 4, December 1993.

Freidman, Maurice. Dialogue and the Human Image. Beyond Humanistic Psychology. Sage Publications, Newbury Park, CA 1992.

Jawaorski, Joseph. Synchronicity. Berrett-Kohler, San Francisco, CA, 1997.

Johnston, Charles M., M.D. Necessary Wisdom, Meeting the Challenge of a New Cultural Maturity. ICD Press. Seattle, WA. 1991.

Senge, Peter M. The Fifth Discipline: The Art and Practice of the Learning Organization. Doubleday/Currency, New York. 1990.

Wheatley, Margaret J. Leadership and the New Science. Berrett-Koehler, 1992.

Wheatley, Margaret J. a simpler way. Berrett-Koehler, 1997.

Isaacs, William. Dialogue and the Art of Thinking Together. Doubleday, NY, 1999.

Yankelovich's, Daniel. The Magic of Dialogue. Simon and Schuster, NY, 1999.

投稿者 eureka : 2004年12月30日 11:17

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